ハマグチさん

毎月通う総合病院でのこと。
診察券と保険証を受付でだし、受付番号とカルテを受けとり、診察科へ向かう。
診療科でカルテを提出して暫くすると名前を呼ばれる。
「ハマグチさん、ハマグチシンさーん。」
私の名前ははしぐちだ。はしぐちしんだ。
十中八九、ハマグチと呼ばれる。 いや、覚えているこの半年の間は100%、ハマグチだ。
 「あのぉ、はしぐちではないですか?」
 「あぁ、ごめんなさい」と謝るこの看護師さんとは先月も同じやり取りをしている。
 看護師さんが手に持っている、
半角カタカナでハシグチと印刷されたラベルが貼ってある検査用のコップが目に入る。
ハシグチとハマグチ、間違えるか?
いや、そうだ、きっとこの病院には、この診療科には、有名なハマグチさんがいるのだ。
 他の患者さんかな?いや、私もそこそこ特徴的ではあるぞ。
いや、病院という場所ではそれほど、特徴的ではないか。。。
 そうだ、もしかしたら、大先生とかでいるんだ、ハマグチさん。
 大御所で、外来には出てこないけど、入院病棟やカンファレンスでは幅をきかせてる、ハマグチ先生。
妄想は広がる。
腕は確かなんだが、ちょっと面倒くさがられてるハマグチ先生。
しゃべり方なんかも独特で、若い医師や看護師に、ちょいちょいマネをされてるハマグチ先生。
「チミはなんちゅー名前だったかな?ごめんなさいよ、先月(シェンゲツ)も聞いたっけ?歳をとると色々おぼえられないねぇ。」 と5年ぐらい言い続けているハマグチ先生。
あ、 そうか、それで看護師さんが私の名前を呼ぶときちょっと半笑いなんだ。